「上司が怖くて萎縮してしまう」
「毎朝、会社にいくのが憂うつだ」
「上司が怖くて辞めると言い出せない」
「同僚やお客さんのことを考えると辞めにくい」
こういった理由で、会社を辞めるに辞められず、日々、辛く苦しい思いをしている方のために、ぜひお伝えしたい言葉があります。
さらに、社会保険労務士として、100社以上の会社にかかわってきた経験から、退職に関して、意外と多くの方が勘違いしている法律のこと、労働基準監督署(労基署)のことなどをお伝えします。
会社を辞めたいけど、迷っている人へ
数年後、数十年後に後悔しないために
“なんだったんだろうな、この会社人生。
出世レースも、上司の言いなりも、社会人として当然のこと。
それが仕事で、生き残るための術だと思って耐えてきた。
笑える。あんなくだらない男、なんで俺は恐れていたんだか。“
映画『七つの会議』2019年 北川誠(役:香川照之)
20年前から、上司や親会社から無理難題を押し付けられ、自らも部下に過剰なノルマをかし、高圧的な態度で「鬼」と呼ばれていた北川誠(役:香川照之)が、物語の終盤に語った言葉です。
この言葉を選んだ理由
「今、我慢すればなんとかなる」、「仕事だから耐えないといけない」と思って頑張っている人に、一度冷静に考えてみてもらいたいからです。
このまま頑張ったとしたら、数十年後に、「なんだったんだ俺の人生は」と思わないだろうか?と。
嫌な上司や会社という組織に、人生を振り回されることに、耐えなくても良いんじゃないでしょうか?
頑張らなくてもいい理由
ひと昔前までは、頑張って耐えていれば、給料が上がって、ポストも与えられて、十分ではないにしても、それなりに耐えたことへの見返りはありましたが、今はそんなものはありません。
あのトヨタが、終身雇用制度はもう無理だと言っています。
これから、日本の会社も終身雇用から、欧米のようなジョブ型雇用への移行が進んでいきます。
このジョブ型雇用が進むと、嫌な上司や合わない上司の下では、十分に自分の力を発揮することができず、給与アップやキャリアアップの機会が失われていってしまいます。
ですので、嫌な上司や合わない上司の下で、無理して働くことはオススメしません。
真面目な人ほど辞められなくなっていく
「自分が辞めれば、同僚やお客さんに迷惑がかかるから。」
真面目な人ほど、このように考えてしまいます。
あなたがこう考えている間に、同僚は辞めていってしまいます。
私の顧問先で、もの凄いワンマン社長の会社がありました。
例えば、社長は来客があってもおかまいなしで、会社の入口付近に社員数名を集めて、大声で怒鳴っていました。
「なんで、こんなことになってるんだ!」
「これくらいのこともできないのか!」
「どうするつもりだ!!」
こんな調子ですから、私のもとには、会社の規模から考えると、通常では考えられない数の退職手続きの依頼が、事務担当者から来ていました。
実は、この担当者の方も、「辞めたいです」とよくおっしゃっていましたが、後任がいないことを気にして、辞められない状態に陷っていました。
そうこうしているうちに、この方と業務を分担していた人が辞めてしまい、ほとんどの仕事がこの人の元へ・・・。
上司に言っても、「社長に聞かないと」と言うだけで、何も手を打ってくれず、数ヶ月間苦しまれましたが、最終的に、「もう無理です。耐えられません。」と言って辞めていかれました。
このように、責任感の強い真面目な人ほど、自分だけのことだけではなく、他の人のことや、組織のことを考えるので、しんどい思いをしがちです。
責任感や真面目さは大切ですが、それを発揮していいのは、尊敬できる上司や頼りになる上司と仕事をするときだけ。
尊敬できない上司、嫌な上司、合わない上司、ましてや高圧的で怖い上司なら、会社を辞めて環境を変えることが必要です。
もし、社内的に可能であれば、異動を申し出るという方法もありますね。
ここから先は、辞める場合を想定して書いています。
2週間経ったら会社を辞められる
就業規則に書いてあることは絶対ではない。
多くの会社の就業規則には、例えば「退職する場合は、2ヶ月前までに申し出ること」という感じで、いついつまでに申し出てくださいね、という記載がされていることが多いです。
就業規則は、会社と従業員間のルールなので、当然その内容は双方が守らないといけませんが・・・
では、本当に2ヶ月前までに申し出ないと退職できないのか?というとそんなことはありません。
退職についての法律
退職についても、法律できちんと規定されています。
※これは、正社員のように雇用契約の期間がない場合の規定です。
アルバイトやパートタイマー等で、雇用契約の期間が決まっている場合は、原則としては、契約期間の途中での退職は認められません。(会社が承認すればOKです)
このとおり、「辞めます」と申し入れれば、就業規則に2ヶ月前と書いてあろうが、2週間たった時点で退職できるということです。
ましてや、仮に引き止められたとしても、それに応じなければ退職になります。
退職は書面で申し出た方が良い
申し入れについては、口頭でも有効ではありますが、退職届は出したほうが良いです。
なぜなら、言った言わないになる可能性もありますし、退職日をめぐって会社ともめる可能性があるからです。
例えば、賞与がもらえないことも。
多くの会社では、賞与は支給日に在籍している従業員が対象となっています。
自分は賞与支給日以降に退職するつもりで、1ヶ月先の日付を伝えたとしても、会社側が先ほどの民法の規定を使って、退職すると聞いた日から2週間経った日(賞与支給日前)に、「はい、退職ね」としてしまうことが考えられます。
お互い証拠がありませんから、当然もめますよね。
ムダなもめ事を避けるためにも退職届を出しましょう。
退職日まで出勤したくない!には注意を
これまた、多くの会社の就業規則には、引き継ぎ等のために「退職日前2週間は現実に就労すること」という記載がされています。
さらに、このつづきに、この2週間の期間に出社しなかったことで、引き継ぎ等ができず、会社に損害を生じさせた場合は、退職金のカットや、損害賠償をするといったことが書かれていることが多いです。
私の経験上は、実際にこのようなことをした会社はありませんが、世の中には会社が訴えをおこし、裁判所も会社の訴えを一部認めた例があります。
実際には、会社の命運を左右するほどの重要な仕事を任されているとか、あなた自身しかできない仕事があるのにもかかわらず、引き継ぎを行わなかったせいで、甚大な損害が発生したというようなことがない限りは、損害賠償などの対象にはならないでしょう。
ただし、一応、このようなこともあり得ることを頭に置いておいてください。
残っている有給休暇は使えるのか?
「辞める前に有給休暇が残っているけど、どうなるの?」という質問を受けることがあるので、有給休暇について知りたいという方は、こちらの記事をお読みください。
どうしても自分一人で「辞める」と言えないときは?
労基署はあてにしない
たまに、労働基準監督署(労基署)に相談してみましょう。ということを書いてある記事を見るのですが、私はオススメしません。
なぜなら、労基署は会社が法律に違反している場合には、調査などを行ってくれますが、「辞めたいんですけど、どうしたらいいですか?」は、法律うんぬんの問題ではないからです。
もちろん、相談にはのってくれますが、あなたの代わりに「〇〇さんを辞めさせてください。」とは言ってくれません。
連絡をしないで辞める
連絡せずに突然会社に行かなくなる戦法ですね(笑)
この記事を読んでいる真面目なあなたは、やらないと思いますが、リスクを2つお伝えしておきます。
2.懲戒解雇処分にされるおそれがあること
懲戒解雇処分について
目安として、社員が14日間無断欠勤をした場合、会社は懲戒解雇をしても良いということになっています。
懲戒解雇は、社員側に重大な責任があって会社を辞めさせられたという扱いなので、転職をする際に、そのことが、転職希望先の会社にわかってしまうと非常に不利になります。
(通常の解雇が離婚なら、懲戒解雇は死刑くらいの差があります。)
退職代行サービスを利用する
退職代行サービスは「お使い」
正直なところ、私は退職代行サービスに関しては否定的です。
理由は、一般的な退職代行会社は、法律的に言うと、ただの使者です。あなたが「会社を辞めたい」という意思を会社に伝えることしかできません。
めちゃくちゃ簡単に言うと、「お使い」です。
これだと、あなた自身が退職願を郵送で届け出たのとなんら変わりはないですからね。
郵便で済むことに、数万円もお金を払う必要はないんじゃないかということです。
ただ、どうしても、自分は一切会社とかかわりたくないという場合は、退職代行を使うことも致し方ないかなと思います。
あなたの心が”楽”になることが一番大切ですから。