「残業がなくなったり、休業になったりして給料が減ってしまった。」
「子どもの教育資金が足りないかもしれない」、
「老後生活が不安で仕方ない」、
「自分が自由に使えるお金が欲しい」
などの理由で副業をやりたと思って、
会社の就業規則を確認したら、副業禁止とは書いていなかった。
これは副業をしても、問題ないということだろうか?
それとも、書いてなくても副業したらまずいのか?
と悩まれている方のために書いたの記事です。
社会保険労務士として、50社以上の就業規則を作ってきた経験にもとづき、具体的な根拠を示しながら、就業規則に副業禁止と書いてないけど、副業をしても問題ないのか?という疑問にお答えしていきます。
就業規則に副業について書いてない場合、副業をしても問題はない?
原則、問題ありません。
そもそも、勤務時間外のプライベートな時間で、何をするのかは個人の自由です。
会社が縛ることはできません。
それに、副業は法律で禁止されていません。←これ重要
副業が禁止かどうかというと、就業規則に副業のことが、書いてあるかどうかが重要視されます。
しかし、就業規則の内容が有効になるのは、法律の範囲のことだけです。
そのことは法律で明確に定められています。
法律>就業規則
ですので、就業規則に副業禁止と書いてある会社であっても、社員がそれに違反して副業をしていたとしても、罰することはかなり難しいんです。
副業の禁止をめぐって、会社と社員が裁判で争ったケースがいくつもあります。
一部ご紹介します。
マンナ運輸事件(京都地判)
副業を許可制としていた会社、社員からのアルバイトの申請を却下しましたが、休日のアルバイト禁止は認められないという結審が出ました。
東京都私立大学教授懲戒解雇事件(東京地裁)
大学教授が講義の代講や休講を利用して、語学学校の講師や語学講座の経営などを副業として行ったことを理由に、大学はこの教授を懲戒解雇にしましたが、裁判では懲戒解雇は不当とされました。
このように、就業規則で副業が禁止されていて、会社がその規定があることを理由として、社員を処分しても、その処分は不当だということになります。
ましてや、就業規則に副業についてなんら記載がない以上、法律に違反するような仕事でない限り、副業をすることはなんら問題ありません。
が、しかしです。
ただし、「どんな場合もOKではない」ということは注意しておいてください。
ここまで書きながら、実は就業規則に副業禁止の記載がある・なしにかかわらず、副業が認められないケースがあります。
それを今からご説明していきます。
副業が認められないケース
副業が認められないケースとして以下の4つがあげられます。
1.労務提供上の支障となる場合
深夜に働くことなどによって、本業の勤務時間中に、職務に専念できなくなってしまうというな、本業の業務になんらかの支障をきたすおそれがある場合などが当てはまります。
2.企業秘密が漏洩する場合
飲食店の秘密のレシピが漏れてしまうことや、顧客情報を副業で活用する場合などが当てはまります。
3.企業の名誉・信用を損なう行為がある場合
法律で禁止されている仕事を行った場合や、本業の会社のイメージを低下させるような場合。トラックドライバーが、副業でも、アルバイトのトラックドライバーとして働いていたときに、不注意で大事故を起こしてしまった場合などが当てはまります。
4.競業によって、本業の会社の利益を害する場合
副業で、自分で事業を立ち上げる場合に、本業と同じ仕事をして、同じエリアのお客さんを顧客にする場合などが当てはまります。
(参考:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」)
この4つのいずれかに当てはまる場合は、就業規則に副業禁止の記載がある・なしを問わず、副業が認められない可能性が高くなります。
副業開始前~開始したあとに注意すること
厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を参考に、就業規則に副業の記載がない場合の、副業開始前から副業を実際に開始した後に、気をつけることを独自にまとめてみました。
副業をはじめる前に注意すること
1.就業規則に副業禁止の記載がないことを確認
ぜひもう一度、就業規則を確認してください。
服務規律などに、さらっと一文だけ書いてあることがありますので、見落としがないように気をつけてください。
「従業員は、会社の許可なく他に雇用され、又は事業を行ってはならない。」
2.副業の内容の検討
現在の仕事に支障がないか、自分自身の健康を管理できるかどうか、副業の内容が、先ほどの「副業が認められないケースの4つ」のいずれかに、当てはまっていないかを確認する。
3.上司や人事担当者との話し合い
後から会社とトラブルにならないように、副業をはじめる前に、上司や人事担当者と話し合いの場をもつ方がよいです。
副業をしていることを知られたくない場合は、言えないですけどね^^;
副業をはじめた後に注意すること
1.労働時間・健康の管理
自分自身が本業・副業あわせて、トータルでどれくらいの時間働いているのか、健康に問題はないのかを管理しましょう。
2.両立ができているかの確認
本業と副業の業務量、進捗状況、労働時間などを考慮し、両立を難しく感じたり、健康に不安を感じたときは、このまま副業を続けるかどうかを検討しましょう。
どちらも当たり前のことですが、本業に悪影響が出ないように、自分でしっかりと管理しましょうということですね。
公的保険(労災保険、雇用保険、健康保険・厚生年金保険)について
公的保険については、アルバイトなど、会社に雇用される形の副業を行なう人が該当します。自分で事業を立ち上げる人は関係ありません。
なお、これからお伝えすることは、2020年8月15日現在の情報です。今後、副業の推進に向けて、法改正が行われる可能性があります。
労災保険
副業の会社へ移動中にケガをした場合
本業の会社から、副業の会社への移動中に起こった事故は、通勤災害に該当するので、労災保険の給付が受けられます。
もちろん、自宅から副業の会社へ向かう途中のケガも対象になります。
副業の仕事中にケガをした場合
ケガの治療費は全額労災保険から支給されます。
ケガで仕事を休むことになった場合は注意
仕事中のケガで、会社を休んだ場合は、労災保険から給与の補償をしてもらえるのですが、副業中のケガで、会社を休んだ場合、その補償額は、副業の会社の給与をもとに計算されます。
雇用保険
雇用保険は本業の会社でのみ加入となります。
会社を退職して、失業保険(失業給付)をもらう場合は、本業の給与のみをもとにして、支給額が決まります。
健康保険・厚生年金保険
原則としては、本業の会社のみで加入となります。
しかし、副業の会社で、おおよそ月16日以上出勤して、1週間あたり30時間以上勤務する場合は、本業の会社と副業の会社両方で、健康保険と厚生年金保険に入ることになります。
なお保険料は、それぞれの会社で按分されます。
また、従業員数が501人以上の会社で副業をする場合は、1週間あたり20時間以上の勤務で、月の給与が8万8千円以上になる場合は、加入の対象となります。
501人以上の会社で働かない限りは、副業の会社で健康保険・厚生年金保険に加入することはないのかなという感じです。
税金について
副業の収入が20万円以上になった場合は、所得税の確定申告が必要になります。